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会いたいと願う気持ち 18

 返事といっても、どう答えたらいいんだ。付き合ってくれと言われたわけでもない。ハルを恋愛対象で……見てないし、見れない。無理だろ、どう考えても。それを言えばいいのか?  自分を真っ直ぐに見つめてきた、琥珀色の瞳を思い出す。宝石みたいな瞳だなと、出会った時から思っていた。バイト中はいつも穏やかだし、静かな目をする奴だなと思ってたんだ。  そんな印象だったから、幸田の事件の時はかなり驚いたんだけれど、あの時は暗がりだったし、はっきりとは見えなかった。  あんな感情剥き出しの、見たものを射抜くような視線。 (あんなの……女だったらコロリとやられるだろ)  ペットボトルに残っていた水を一気に飲み干して再びハアと息を吐き、それからハタと気付く。そうだ、それ以前にあいつには彼女がいるじゃねぇか、ちゃんと。 (あいつ、勢い余って何か感情を履き違えたんじゃねぇか……やっぱり酔っ払ってたのかな)  腹がぐうと鳴り、ひとまず思考を中断することにした。空になったペットボトルのラベルを剥がしてボトルと分別し、ゴミ袋に入れた後、冷蔵庫を開けて中を覗き込んでみれば、卵と豆腐しか入っていない。冷凍ご飯と乾燥わかめはある。 (味噌汁と目玉焼きにするか)  この四年間、節約のために自炊も多少はしてきたけれど、コンビニ弁当やカップ麺の方が圧倒的に多かったし、料理と言えるほどの料理はロクにしていない。バイト先では仕事だから厨房に入るけど、自宅のキッチンに立つのは面倒だと言うのが正直な気持ちだ。  適当に味噌汁を作り、目玉焼きを焼いて、冷凍ご飯を温める。出来上がった朝食をひとりで食べながらふと、ハルと初めて一緒に食べた朝食を思い出した。  あれから何度かハルがうちに泊まる事があって、その度に朝食を作ってくれた。卵焼きとか焼き魚とか、オムレツとか。どれも簡単に作ってくれるのに美味いし、楽しかった。 (……いや、まて。なんでここでハルが先に出てくるんだ)

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