115 / 428

会いたいと願う気持ち 19

 この家で料理をしてくれたっていうなら、京香の方が断然多かった。うちの小さいキッチンで器用にいろんな料理を作ってくれたし、いつも美味かった。大抵むこうの家で会ってたけど、この家にも来る事はあったし、朝食だって何度も。  でも、なんでだろう。  ハルとの朝食は多分、落ち着けて、楽しくて、すごく良かったんだ。 (そう、気が合うと思ったんだよな……でもこの先、どうなるかな。バイトで顔合わせるし、なんにしろちゃんとしねぇとな)  昨晩はあんなにむかついて顔もみたくないと思ったのに、少し落ち着いた今は、関係を悪くしたくないなと考えている自分がいて、地味に驚く。自分が思っていた以上に、ハルの事を気に入ってたんだなと腑に落ちた。それだけに、昨日のあれはやっぱり腹が立つ。 (とりあえず今日はバイト休みだけど、明日は会うんだろうな……どんな顔して会えばいいんだ)  ふいにスマホにライン通知が入り、開いてみればバイト仲間の五十嵐からだった。 『今日なんか用事入ってる?』  特に無いので、別にないと返信すると、すぐに返信が来た。 『今日のバイト変わってくれ!一生のお願い』  いかつい顔した熊が土下座しているスタンプ付きだ。一生のお願いをこんなところで使ってしまうのかこいつは。  俺は暫く考えてから『いいよ』と返信をして、スマホを手放した。遅かれ早かれどうせ会うんだ。考えてもしょうがない。  コタツに入ったまま畳の上にゴロリと寝転がり、天井を見上げる。再び昨晩のハルの顔を思い出してしまい、ため息をつきながら目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!