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会いたいと願う気持ち 20

◇◇◇ 「おはよーございまーす」  着替えて厨房に入ると、店長と社員の井上さんの姿が見えた。コンロ前に立っている店長が振り返り、あれっと声をあげる。 「省吾、今日は休みじゃなかったかな?」  ピーラーとじゃが芋を手にした井上さんも振り返り、おはようと間延びした挨拶を返してくれた。 「省吾、梶くんと交代して休みにしてたよね。間違えて来ちゃったの?」 「五十嵐から代わってくれって連絡がきたんスよ。まあ用事もなかったし」  手洗い場へ向かいながら答えると、省吾はこの店大好きだよねぇと笑う店長。別に好きってわけじゃない。金の為だっつーの、と思いながらも余計な事は口にしないでおく。井上さんは細い目を大きくして(といっても糸目だけど)驚いた表情のまま口を開いた。 「マジか、クリスマス時期に四連勤って、身体は大丈夫か? 多分今日も忙しいぞ」 「大丈夫っスよ。明日は五十嵐と交代して休むし、そのあと四連勤したら年末休み入るし」  お前も大概お人好しだよなぁと呆れ口調の井上さんに対して、店長は大鍋をかき回しながら「大入出ると良いねー」などと言って笑っている。大入り上等。むしろ息つく暇も無い程に忙しくなって貰いたい。  掲示板に貼られたシフト表を確認すると、今日のスタッフは厨房に店長と井上さんと俺と梶、ホールに新人バイト二名と三上とハルが入る予定だ。担当場所が分かれてホッとしている自分に気付き、軽く舌打ちをする。 「おはよーございまーす」  やたら明るい声で三上が入ってきた。どうしたの機嫌良いじゃないと店長に聞かれ、浮かれた様子の三上が視界の端に映る。 「三上くん、付き合いたての彼女と初クリスマスだったよねー。さてはラブラブしまくったな」  からかう店長に「いやークリスマスは良い行事でした」などと報告をしている。二人の横を通り過ぎて冷蔵庫へ向かう途中、入り口から入ってきたハルと出くわした。お互い一瞬動きが止まり、先に俺が口を開き、遅れてハルも挨拶を交わした。 「はよ」 「おはよう」  俺はそのまま冷蔵庫へ向かい、ハルは三上達が立つ方へと歩いていく。

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