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会いたいと願う気持ち 21
(はあ……こんなんでビクついてどうすんだ。早いとこ昨日の件を片付けて落ち着きたい)
冷蔵庫の中の在庫確認をしながら小さくため息をつく。背後からは三人の雑談にハルも加わり、のんきに笑い声なんて聞こえて来る。苛々しないよう耳に蓋をしておこう。
「三上くん、三ツ星シェフのレストランに行くっていってなかったっけ。どうだった?」
「あっそうなんですよ、ヤバかったです、無茶苦茶美味くて! それに聞いてくださいよ、なんとハルも彼女と来てて、ビックリしたよなーハル」
三上の声が耳に飛び込んできて、思わず手が止まる。
「あ、うん」
受け応えるハルの声は小さくて、それに被せるようにテンションの高い三上が言葉を続けた。
「見たことのあるイケメンがいるわと思ったらハルで、二度見しましたよ俺。彼女、年上の人? 目茶苦茶綺麗な人でビビったわ」
「え、ああ……サークルの先輩で」
「すげー仲良さげにしてるし、声かけるの一瞬躊躇っちゃったもん」
「マジか、お前達ほんと羨ましいな、くそー。俺なんて両日出勤だぞ」
「井上くんもそのうち良い人現れるから、焦ることないよー」
ハルも何か言ってるようだけど、声が小さくてよく聞こえない。三上の声がデカすぎる。井上さんをフォローする店長の言葉なんて、耳から耳へスルッと流れていった。
その後も三上のクリスマスネタで話は続いていたけれど、俺は無言でハンバーグのタネを丸める事に集中した。というのは見た目だけで、頭の中は三上の言葉がグルグルと回り続けていた。
(へぇー、美人の彼女と仲良くデートしてたんじゃねぇか、やっぱ)
それで、なんでその数時間後にあんな事になってんだ。俺を馬鹿にしてるのか。無駄に突っかかられて、昨晩から今まで無駄に悩んで気を揉んで、なんなんだ。迷惑千万この上ない。
考えれば考える程ムカついてきて、うっかりハンバーグのタネに八つ当たりをしかけてしまった。
(真面目に考えてた俺が馬鹿みたいじゃねぇか)
ハンバーグを三十個丸めた頃には、苛立っていた心も少し冷静になり、段々どうでもよくなってきた。
真面目に考えるのはやめだ。昨日のあれはただの事故だ。酔っ払いに噛まれたと思えばいい。なかった事にして終わりにしよう。
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