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会いたいと願う気持ち 22

 気持ちを切り替えたら少しスッキリして、ハルの顔を見ても普通でいられた。仕事中の会話も普通に出来た。もうこれでいい。  今日の客層はファミリーが多く、昨日とはまた別で終日忙しく終わった。忙しいのは良い事だ。余計な事を考えなくてすむ。  店長と井上さんを残して俺も仕事を上がり、正面口から店を出ると、先に上がったはずのハルがガードパイプに腰をかけているのが目に入った。それに気付かぬ振りをしてすぐに左へ曲がり、歩き始めたところでやっぱりというか予想通りというか、背後から名前を呼ばれた。  振り返りたくねぇなと思いながらも渋々振り返れば、ハルはきゅっと眉間にしわを寄せ、俺を真っ直ぐに見つめてきた。 「省吾、昨日は……悪かった」  悪かった。その言葉がズキンと胸に響いた。酔っ払って絡んで悪かった。変なことして悪かった。忘れて欲しい、悪かった。そんなところだろうか。 「……別に」  ぼそりと呟けば、え、と聞き返されてイラついた。どうでもいい。 「全部、どーでもいい」  今度ははっきりと言葉を口にして、目の前のハルを見つめ返した。  安心しろよ。なかった事にしてやるし。  それ以上話す事もないので、立ち尽くしたままのハルを置いて俺は俺できびすを返し、歩き始めた。  暫く歩いていると、ふと鼻先に冷たさを感じて、空を仰いだ。星ひとつ見えない真っ黒な空から、小さな雪が、はらりはらりと舞い降りてくる。 「雪か。どうりで寒いと思った」  手のひらを広げると小さな白い粒が降り立ち、静かに消えた。 「……さむ」  首に巻いたマフラーを鼻の上まで引き上げて、俺は再び歩き出した。

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