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会いたいと願う気持ち 23

◇◇◇  十二月三十日。  年末最終日も満員御礼に終わり、気を良くした店長が店を閉めてから飲みに行くぞと言いだした。終電を逃したくないバイト連中はうまいこと理由をつけて早々に逃げ帰り、逃げきれなかった井上さんと俺が生贄の如く、店長行きつけのバーへと連行された。皆、逃げ足が早過ぎる。  四連勤でくたくただと言うのに、キツい酒を飲まされたら確実に寝落ちる自信がある。マスターに「アルコール低めのカクテルがいい」と頼むと、白ワインをソーダで割ったスプリッツァーをだしてくれた。さっぱりしていて飲みやすく、疲れた身体に微炭酸の刺激が心地よい。 「今年も従業員皆無事故で終えることが出来て、良かった良かった」  ハイボールを一息で飲み終えた店長が安堵の息をつくと、隣の井上さんがジントニックをのんびりと飲みながら「まあ事件と言ったらあれですかねぇ、幸田くん事件」と余計な事を言い出した。井上さん、人畜無害そうな糸目をしながらとんでもねぇ人だ。 「ああ、あったねぇ。始めから就業態度も良くなかったし、注意しないとなぁと思ってたら、省吾が先にブチ切れちゃったやつね」  店長は言われるまで忘れてたって顔をしている。経営者としてどうなんだと突っ込みたいところだけれども、ここはぐっと抑えて汐らしく頭を下げた。 「あの時は完全に頭に血がのぼってほんと、すみませんでした」 「俺が煙草買いにちょっと店を出て、戻ったら幸田くんの代わりにハルが立ってたんだから、あれは驚いたなぁ。あの時のハルの困り果てた表情《かお》、省吾は忘れちゃ駄目だぞ」  店長がクククと喉で笑うと、井上さんはげんなりした表情で肩をすくめた。 「あの場に居合わせた俺達は凍りつきましたからね、ほんとに……」  まぁ、思い返せば俺もやり過ぎた気もするし、ハルには迷惑をかけたと思ってる。バツが悪くなり、スプリッツァーをぐっと煽った。 「俺としては、ハルには関しては結果オーライだけどね。優秀な人材は大歓迎。そう考えたら省吾の人選のお陰だな?」 「はあ……」

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