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会いたいと願う気持ち 26

 グラスに残っていたスプモーニを一口で飲み干して席を立つ。黒のダウンジャケットを着込み、グレーのマフラーを首に巻いてから、二人に声をかけた。 「眠くなってきたんでお先失礼します、店長ご馳走様です」 「えー、省吾もう帰るの? 早いよ~、酔い潰れたらうちに連れて帰ろうと思ってたのに」 「脳内駄々漏れな台詞はやめてください。井上さん、すみませんけどあとお願いします」 「歩いて帰るの? 気をつけてね、よいお年を」  二人に頭を下げて店を出た途端、頬が冷気に包まれた。 「うお、さっむ……」  マフラーをぎゅっと巻きなおし、両手をポケットに突っ込んで身を縮こませた。  あまりの寒さにタクシーを拾おうか一瞬迷ったけれど、酔いを醒ますためにも歩く事を決める。 (今年もあと一日で終わって、すぐに来年がやってくる。あっという間だな)  ひとけのない夜道を四十分弱かけて歩き、帰宅後即爆睡し、目が覚めたら喉が痛くなっていた。風邪薬を飲んでも時既に遅し。  その後、昼過ぎには熱が出て、年末年始は実家へ戻らずアパートでひとり寝込んで終わる羽目になってしまった。熱と戦いながら、タクシーを使って帰れば良かったと後悔した事は言うまでも無い。  己の体力を過信してはいけないのだと、強く学んだ年末年始だった。

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