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会いたいと願う気持ち 27

◇◇◇  一月に入っても関東に本格的な大雪が降る事はまだ無く、地味に寒い日が続いている。冬は昔から苦手だ。雪が降らなくても寒いものは寒い。春よ早く来いと念じながら鼻水をすすり、春を待ちわびる動物達の気持ちもこんな感じなんだろうか、などと物思いにふける事もしばしば。  バイト先には新たに学生バイトが三名入った。卒論に追われている古参連中の出勤が減った上に新人教育もしなきゃならないとあって、俺の休みは殆どなくなった。連日バイトの忙しさに加えて卒論作成のラストスパートも重なり、魔剤で騙し騙し疲労困憊をやり過ごす日々だったけれども、そんな極限の日々から本日やっと解放されたのだ。 (あー……なんか口から魂出かかってる気ぃする……)  バイト先のレストランに到着し、着替えもせずに更衣室兼休憩室の机に突っ伏して目を閉じていると、やがて扉がガチャリと開き、誰かが入ってきた。 「省吾? どうした、具合が悪いのか」  声をかけられてむくりと起き上がれば、心配そうに眉を寄せるハルが立っていた。 「いや……今日、卒論提出日だったんだよ。終わったと思ったら疲れが一気に来た」 「ああ、そうか、お疲れ様。卒論作成と平行してのバイト尽くしで辛かっただろ、あんまり無理しすぎないようにね」  ハルの笑顔と労りの言葉に、疲れてガチガチに固まっていた身体がシュウウと緩む。それに気付くと途端にむず痒くなって、気持ちが落ち着かなくなった。 (……なんだこれは。身体弱り過ぎたのか?)  慌てて気持ちを切り替えて立ち上がり、着替え始めたハルの隣で俺もロッカーから制服を取り出し、着替え始めた。  ハルの横顔が視界に入り、そういえばこいつは理系だから……と思い当たる。 「お前んとこはまだなんだろうな、提出期限」 「うん、来月に研究発表があって、卒論提出日はその後だから」 「マジか、大学最後の春休みなんて殆ど無さそうだな」 「はは、まあおかげで希望していた研究職につけるしね。やりきらないと」  まだしばらく忙しいよとため息混じりに微笑むハルを横目で見ながら、ふぅんと相槌を打つ。理系は卒業も大変だな。

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