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会いたいと願う気持ち 30

 出勤日数を減らしているくせに、誕生日にピンポイントでバイトを入れているハルを不思議に思った。祝日だからだろうか。彼女は放置か、それとも放置されているのか、知らんけど。友達にからかわれている様子のハルを眺めながら、そうか誕生日か、とひとりごちた。  厨房から上がってきた料理をテーブルへ運び、バックヤードへ戻ると、お盆を拭きながらぶつぶつと呟いているハルが居た。早く帰ってほしいとかなんとか、念仏のように唱えている。 「なにぶつぶつ言ってんだよ。気持ち悪ぃぞ」  声をかけるとハッとしたようにハルが振り返り、ああ……と力なくため息をつきながら、お盆を所定の位置へと戻した。 「突然知り合いがさ……」  友達が店に来る事がそんなに嫌だったのか。店の売り上げに貢献してくれる友達がいるなんて、良い事じゃねぇかと思うけれど。俺にはそんな友達居ないからな、と思いながらハルを見つめた。俺がじっと見つめるのが変だったのか、「え、なに?」と驚かれた。 「お前、今日誕生日なの?」 「え?」  少しの間を置いて、あ、うん、と頷く。 「そうだよ」 「そっか、おめでと」  祝いの言葉を短く告げると、ハルは一瞬動きを止めて、瞬きを二度三度繰り返し、それから「え?」と聞き返してきた。  誕生日だと知ったから、それはめでたいなと思って、そのまま口にしただけだ。それ以上でもそれ以下でもない。  それだけの事に、なんでそんなに驚いた顔をするんだろうかと不思議に思った。  そもそも、こいつは何かにつけて聞き返してくることが多い。俺の言動がおかしいのだろうか。他の人間に対してもこうなのか、それとも俺に対してだけなのか。他のバイト連中と会話しているのを見ていてもそんな事はないので、多分俺だけだ。珍獣扱いをされているようで、なんだかむかついてくる。 「聞き返すなよ。誕生日っつーたら、おめでとうだろ」 「……ありがとう」  ワンテンポ遅れて返ってきた言葉があまりにも心がないというか、ふわふわした感じなのが気になって、もう一言くらい付け足してやろうかと口を開いた時、ホールから客の呼び声が聞こえたので、ぼけっと突っ立っているハルを置いてホールへと戻った。

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