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会いたいと願う気持ち 34

 誕生日っていうのはそういうものだ。俺なんてそれこそ多分周りから生まれる事を望まれてなかったけれど、母ちゃんが頑張って気合入れて産んでくれたから今生きてるんだよなって、誕生日が来るたびに思う。母親様様だ。  そんな事をふと思い返して箸を持つ手が止まっている事に気付き、再び親子丼をかき込み始めたところで、俺をじっと見つめているハルの視線に気付いた。 「今度はなんだよ」 「……いや」 「何だよ気持ち悪りぃな、言え」  煮え切らない受け答えに苛ついて割とキツめに問いただすと、ハルは視線を下げて、ぽろりと呟くように答えた。 「……誕生日なんて、母親に対して申し訳ないと思うばかりだったなと思って」  あ、いや、なんていうか、なんて言葉を濁しているハルの様子を見つめながら、俺は少しとまどった。 (申し訳ないって……)  少し考えたところで、自分がわかる事ではないなとすぐに割り切る。家庭の事情など千差万別だし、よく知りもしない自分が知った顔をするのもおかしな話だし、かといってハルの心情に踏み込む場面でもない。  ただ、ハルの表情が淋しそうにみえて、それが少し気になった。 「まぁ、ひとんちの家庭事情に首突っ込む気はねーけど……謝罪より感謝のが、聞く方は嬉しいんじゃねぇの」  わかんねぇけど、と付けたしてから、俺は再び親子丼に集中した。 「……うん、そうか。……そうだね」  ハルも再び静々と食べ始めたけれど、表情は暗くなかった。  それに少し安心した自分に気付いて、それに凄く違和感を感じて、この違和感はなんだろうと考えた。  俺はハルの事なんてほとんど知らない。通ってる大学とか、偽ってなければ年齢、名前、それからせいぜいバイトでの勤務態度くらいだ。二人で交わした会話だって時間にしたら大した事ないし、それこそ吹けば飛ぶ程の、くだらない話しかしていない。  クリスマスの一件にしたって、ハルの気持ちをちゃんと聞かないままに俺がなかった事にしてしまって、そのままだ。どんな気持ちで何を思ってあんな事をしたのかとか、素のハルがどんな人間なのかとか、ちゃんと向き合わなかったから、何もわからないままだ。

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