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会いたいと願う気持ち 37
「省吾は春から名古屋か〜」
隣を歩く三上に話しかけられて、あぁと答える。
「三上は埼玉だっけ」
「うん、他の奴らも都内周辺に決まったけど、お前だけ離れたなぁ」
「あー、でも名古屋なら近い方だな。同期の中で、実家関東でも余裕で北海道とか九州に配属決まった奴もいるし。それに多分三年周期位で異動になるらしいんだよな」
「うわ。全国展開の会社ってエグいな〜」
うちは異動あっても首都圏内だなぁと話を続ける三上に相槌を打ちながらふと、ハルの事が頭に浮かんだ。あいつは確か、千葉の研究所だって言ってたっけ。
皆、新しい環境になって慣れない仕事を始めて、今までのように軽く会って飲みに行けるような状況じゃなくなるんだろうなと思えば、少し寂しくもある。
いつまでも学生気分じゃいられない。時間は止まらないし、周りだってどんどん変わっていく。
(俺も頑張らないとなぁ)
緩く決意を胸に抱いたところで新人バイト組に周りを囲まれ、急に賑やかになった。三上に道を聞いてから、更に先へと進んでいく。若い。元気な奴らだなぁとひとりごちると、隣の三上が笑った。
大通り沿いをどの位歩いただろうか。やがて先頭を歩いていた連中が声を上げた。
「着いたー!」
「けど咲いてねぇー」
笑い声につられて前方に目を凝らせば、上野公園の入り口が目に入った。
「歩こうと思えば歩けるもんだなぁ」
「電車動いてれば電車乗るけどな」
くだらない会話に笑いながら公園内に入ると、真夜中だというのにそこかしこで花見客が宴会をしている。寒空の下でコートをがっつりと着込み、それでも皆楽しそうに笑っているんだから、異様な光景だ。少し酔いが醒めてきて、気温の低さに気付いてしまい、思わず身震いする。素面だったら確実にここにはいなかった筈だ。ハルの意見に賛同すれば良かったなと思いながら、桜並木を見上げた。
桜はまだ蕾で、三分咲きといったところか。来週末位には見頃になるんだろうか。
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