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会いたいと願う気持ち 44
少し考えて、
『引越し完了。疲れた』
と打って、送信ボタンを押す。
返信が来ても、引越しネタと誕生日ネタがある。連休中だしラインのひとつやふたつ、取り合うのもおかしくはないだろう。
明日にでも返信来るかな、などと考えながら、放置していた段ボールに手をかけた時、着信音が鳴り始めた。驚いてスマホの画面を確認すれば、ハルの名前が表示されている。
「反応早すぎじゃねぇか、あいつ」
しかもラインじゃなくて電話かよと、勢いの良さが可笑しくてクッと喉を鳴らした。通話ボタンを押してハイと答えれば、開口一番『引越しお疲れ』とハルの声。低音で掠れのない、艶のある声が耳に響き、ああこの声だったなと思い出す。
背後は静かで、微かにテレビの音が聞こえてくる。家に居るのだろうか。寝てはいなかったようなので、少しほっとした。まあこの反応の速さで寝ていたということはないか。
『段ボールに囲まれて寝るのか』
「囲まれる程の荷物ねぇし、寝場所余裕」
『そうか、そういえばものの少ない部屋だったもんな』
ハルの言葉にうるせぇよと笑って返せば、電話の向こうでハルも笑った。
『省吾』
「うん?」
『誕生日、おめでとう』
突然の祝いの言葉に驚いた。そもそもなんでこいつ、俺の誕生日を知っているんだ?
ぐるりと一周考えて、ハルの誕生日に聞かれて答えた事を思い出す。軽く聞かれて軽く返した、休憩室での会話。聞かれた俺が忘れる程度の短いやりとりだったのに。
考えているうちに笑いがこみあげてきて、思わずぷっと吹き出してしまった。
『なんだ、どうした?』
電話の向こうでうろたえるハルを想像して、さらにぷぷぷと笑ってしまう。
「お前……俺の誕生日覚えてたの?」
『俺は一度聞いた事は忘れないんだ』
なるほど、そうか。こいつ頭いいんだもんな。
さっきすぐに電話が来たのも、下手したら俺に連絡を寄こそうとしていたのだろうか。日付がかわった深夜にわざわざ?……さすがにそれはないかと打ち消したけれど、ハルが俺の誕生日を覚えていたという事が、くすぐったいというか、痒いというか、素直に嬉しく思えた。
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