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会いたいと願う気持ち 48
「何してんだよ、来たんなら上がれよ。マジでなんもないけど」
カーテンもないし、と笑ってみても、ハルはじっと俺を見つめるだけで、返事もしない。
「おい、ほんとに電池切れか? 千葉からここまで五百キロ、ノンストップで来たんじゃねえだろうな」
人形みたいに動かないハルが心配になって、首をかしげながら顔を覗き込んだ瞬間、ハルの腕に引き寄せられた。
「わっ、なに……」
予告もなしに抱き付かれ、ぎょっとしたと同時に、ハルの身体がやけに冷たい事に気づく。
「お前、えらい冷えて」
「会いたかったんだ……」
ハルの小さな声が、耳に響く。靴も脱がずに俺の身体を抱きしめる、ハルの腕の力は苦しくなる程に力強いのに、微かな震えが伝わってきた。
「会いたかった……」
ハルの呟きが、心に染みる。
胸の奥からじわじわと湧き上がる気持ちはなんだろう。胸が絞られるみたいに痛い。身体の熱が上がっていく。触れているハルの身体は服越しでも冷たくて、なんだか泣きたくなる。
おそるおそるハルの背中へと腕を回し、そっと抱きしめ返すと、ハルの身体がぴくりと揺れた。
「……わかんね、けど……声聞いて、会いたかった、俺も」
掠れた声で答えると、ハルの身体がゆっくりと離れた。今度は正面から見つめられ、うっと言葉に詰まる。琥珀色の瞳が揺れた。
窓から差し込む陽の光が、ハルの柔らかな髪と白い肌に色をつけていく。
(ハルの瞳《め》の中、俺が映ってる)
そんなことをぼやっと考えたのも一瞬で、眉間にしわを寄せたハルにじっと見つめられて、あ、そんな場合じゃねぇなと我に返る。
ハルは不安そうな表情で、何かを確かめるように、右手を俺の左頬に当てた。
「俺に、会いたかった?」
「わかんね……」
恥ずかしくなって目線を下げた直後、言葉を遮るように唇をふさがれた。控えめに吸い上げられてから離れ、キスをされたと理解した。ハッとしてハルの背中から手を離したけれど、腰に回された腕にがっしりと押さえられて、動くことも出来ない。そうこうしているうちに再び唇は重なって、今度は舌まで入ってきた。
「っ……!」
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