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冬の夜をきみと 11

 店を出て佐川さんの後をついていくと、駅から少し離れた広場までやってきた。  木々はクリスマスイルミネーションで彩られ、幻想的なムードだ。 (カップルに最適な散歩コースだな)  でも何故か佐川さんと歩く俺。いや佐川さんこそ、俺と歩くなんて微妙だよな。何となく言われるままについてきちゃったけど、良かったんだろうか。  などと考えていると、空いているベンチの雪を払って佐川さんが腰を降ろしたもんだから、俺も隣に腰を降ろした。  てか、めちゃくちゃ寒い。  雪は止んだけど、どこもかしこも真っ白な雪がまぁるく積もっている。 「ここさ、駅前より静かで待ち合わせには調度良いんだ」  そういや佐川さんは地元の人だっけ。確かに回りに人影がない。  今夜はここで彼女と待ち合わせをしているわけか。 「去年もここで待ち合わせてたんだけど、仕事が終わらなかったんだよなあ」 「遅刻ですか」 「うん、プロポーズするつもりで気合い入ってたんだけどね俺」 「わ、マジすか」 「でも仕事がゴタついて、連絡もうまくつかなくて、やっと終わった時に、恋人が車に跳ねられたって連絡に気付いてさ」  佐川さんの話が唐突過ぎて、俺は声も出せずに隣の先輩を見つめた。 「病院走ったけど間に合わなくて、うん。何にも言えないまま……渡せないまま」  はらりと視界に何かが入り空を見上げると、粉のような、小さくて真っ白な雪が降りてきた。  佐川さんも空を見上げ、降ってきたなと呟いた。

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