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冬の夜をきみと 13
少しつり目がちの大きな瞳で、真っ直ぐに前を見つめる若い男。その視線は隣の先輩に向けられている。
「アキラ」
呟く佐川さんの言葉に、ふたりが知り合いだと気付く。
「誰そいつ」
俺の事か。
「職場の後輩」
佐川さんの簡潔な紹介に、男はふぅんと納得したらしい。
「アキラこそ、何でいるんだ」
「迎えに来た」
「アキラが、俺をか」
「そーだよ。ユウキの亡霊待ってるアホな恭ちゃんを、迎えに来たんだよ」
アキラと呼ばれる男は真っ直ぐに佐川さんを見つめている。広場の景色も、隣の俺も目に入っていないという顔。鈍い俺にもなんとなく理解できた。
こいつはきっと、佐川さんの事。
「去年の約束にしがみついてるアンタなんて、ユウキだって愛想つかすぜ」
「……待っていたいんだ」
そう言った佐川さんの声は今にも消えてしまいそうな程に儚くて、俺なんかがここにいちゃいけないと思った。
「佐川さん」
振り返った佐川さんはいつもと変わらない表情で、優しい目をしている。俺は感謝を籠めて、佐川さんの瞳を見つめ返した。
「俺……会いたい人に、会いに行きます」
気付けば粉雪はしんしんと降り注ぎ、俺の視界を霞ませる。
その先で、佐川さんは微笑んでくれた。
「……そうか」
静かに響いた佐川さんの声は、触れた雪が溶けるほどに温かく、優しかった。
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