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風邪とプリン 2
水を張った洗面器とタオルを持ち部屋に戻ると、省吾は赤い顔のまま嬉しそうに少し笑った。
俺が戻っての笑顔か、プリンが来た事への笑顔か。
おそらくは後者だ。
起き上がった省吾にプリンを手渡した後、テーブルに水と薬を用意してからベッド脇に腰掛け、モソモソとプリンを口に入れる省吾を眺めた。
大人しいのは風邪のせいだろうな。
(……可愛いなあ)
じっと眺めていたら、ジロジロ見るなと怒られた。
ああでもその上目遣いも可愛い。こんな時でも誘ってくるなんて、もはや天使のような小悪魔だ。と俺は常々本気で思っているんだけれど、これを口にしたら確実に殴られるのはわかっているので、うっかり口にしないように気をつけている。
ふと手元のプリンをのぞくと、最後の一口を食べるところだった。具合が悪いというのに、プリンならあっという間に平らげてしまう。
本当に見かけによらずというか、省吾は甘いものが好きなんだなと感心する。まあ完食してくれたなら良かった。
最後の一口を飲み込んだ省吾に悪戯したくなった俺は、今気付いたように声を出した。
「あれ、省吾全部食べちゃったの。一口欲しかったのに」
何だよ先に言えよと少し慌てる省吾がまた可愛い。
空の容器を引き取るついでに、省吾の頭を片手で引き寄せ唇を重ねた。触れるだけのつもりが、触れると更に欲が湧き、思わず舌も押し入れて省吾の舌を絡めとると、甘いプリンの味がした。
案の定、ふざけんな風邪が移るだろと怒られた。
「ごめんごめん、俺も一緒に薬を飲むよ」
そういう問題じゃねぇとぶぅぶぅ言ってる省吾に薬と水を手渡した後、俺も薬をニ粒、口に放り込む。
薬を飲んだ省吾を再び布団で包み、水で冷やしたタオルを額に乗せた後、シャワーを浴びに部屋を出た。
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