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風邪とプリン 6

 この時点で嫌な予感は確信に変わり、省吾も恐らく同じ人物を思い浮かべたのだろう、二人で顔を見合わせた。  俺達の関係を唯一知っている、省吾の同僚。 「ハル、おまえのスマホも鳴っ」  省吾の言葉を唇で塞ぐと、今度はドンドンと扉を叩く音が聞こえてきた。  いや、気のせいだ。気のせい……。  一向に鳴り止む気配のない自分のスマートフォンが憎らしく思えてくる。  渋々身体を起こし、サイドボードで揺れるスマホを掴み着信表示を確認すると、予想通りの名前が表示されている。  玄関からは変わらずドアを叩く音が聞こえて来る。なんて恐ろしい奴だ。  スマホ片手にドアを叩く奴の姿を想像するだけでげんなりしながらも、渋々電話に出る事にした。 「……はい」 『あっ出た出た、ハルおはよー!』  これまた予想通りの爆音に脱力。 「おはよう青木くん。まだ朝早いけど」 『うん早起きしちゃってー。昨日の香取、めちゃめちゃ具合悪そうに帰ってったから、お見舞いに来てみたよー』  青木の爆音は省吾にもしっかり聞こえているらしく、顔をしかめて何やら呟いている。 「気持ちは嬉しいけど省吾寝てるし、俺が看てるから大丈夫。ありがとうじゃあね」  さっさと切ろうとする俺に待て待て待てと騒ぐ青木。 『もう玄関前にいるしー、寒いよー中に入れてよー』  さらにドンドンと扉を叩く音。取り立て屋の勢いだ。近所に怪しまれるじゃないか。  どう断ろうかと一瞬間を置いた時、そっかあと青木から声を上げた。 『もしかして朝から取り込み中だった? アハハ、益々香取が心配ー』  俺のスマホに手を伸ばし反論しようとする省吾を押さえ、ここぞとばかりに肯定しておく。 「うんそうなんだよ、ごめんね青木くん、じゃあ」  ハルてめぇと怒りの矛先を俺に向ける省吾は置いといて、一先ず青木を追い払いたい俺は、優しく答えて終わりにしようとした、が。 『んじゃニ時間後に出直すねー!』  軽く殺意が芽生えた。 <終>

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