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愛はどうだ 2

「そうだ、俺この間引っ越したんだよ」 『引っ越し? コミコミ五千円の社員寮から? なんでよ、生活出来てるの?』  さすが母親。こだわる部分は俺と一緒だ。金銭面で苦労しながら女手ひとつで育ててくれた母ちゃんは、金に関しちゃめちゃくちゃシビアだ。子供の頃からその影響を受けている俺もまた同様で、財布の紐はまあまあカタイ。 「まぁ、同居人いるし」 『あら何、彼女? ちゃんと紹介してよ』  母親のトーンが上がった。変な誤解を招いたら面倒だ。 「や、男と」 『へえ、友達とシェア?』 「あー、ええと」 『まあいいわ、あとで住所連絡してね。ところで用件はお正月の事なんだけど』  正月か。毎年元旦は実家に一泊している。一応母親独りだし、地元の奴ら集まるし。ハルと話してないけど、正月はあいつも実家に帰るだろう。 「元旦帰るよ、今年も」 『やっぱり? ゴメン今年はお母さん、旅行へ行く事にしたの』 「旅行? まいっけど。どこ行くの」 『えへ、ハワイ♪』  母親が正月に海外旅行。そんなオンシーズンにわざわざ行くなんて、通常じゃまずあり得ない。 「マジ? どんな風の吹き回しだよ。正月から海外行ってくれる友達なんていたの」 『今度紹介するけど、お付き合いしてる人がね……ふたりでのんびりしようって。キャー』  男が金を払ってくれるわけだ。納得した。  母親は昔からまあまあモテるようだとは気付いているし、好きにやってくれと思うけれど、恋愛話を息子に語るのは勘弁してほしい。息子としてそれなりに複雑な気持ちになるのだ。まあ、昔ほどじゃないけれども。 「あ、そ……まあ再婚する時は紹介してくれよ。正月は地元で飲み会あるから、電車なくなったら実家で寝てくかも。まあ適当にするし、旅行楽しんで」

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