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愛はどうだ 7
「口は悪いが清々しかった!」
口は悪かったと。誉めてませんけど。
「鞄持つなら足の間。両手は上に上げておくといいですよ、満員電車は」
「はぁ、そうですね。もう何年も車通勤なもので、ぼんやりしてました」
冷えたビールを喉に流し、機嫌良くなってきた俺は、気が付けば何やらオッサンの話を聞かされていた。
「せがれが最近、ここに引っ越しまして……今日は少し様子を見に行こうかと来てみた所で」
「はあ」
「本人には言ってないんですが」
「はあ……え? それ微妙じゃないスか」
「え、でも平日だし夜なら家にいるかと」
「いやいや、彼女とか来てたら……てか突然てぶっちゃけ迷惑じゃないですかね、親子でも」
不安そうに俺を見ないでくれ。
うわ果てしなく面倒くせぇ。
「そうですかね」
「いや、まあ、人によるとは思いますけど」
「息子とは昔から余り会話がなくて」
ますます止めといた方がいいと思うよ……。
「まぁ俺は父親居ないんでそういうのよくわかんないんですけど」
そこまで言ってギクリとする。
オッサンが愕然としている。
いや別に今更感傷とかそういうの全然ないし。
「少なからず自分を気にかけてくれる父親の存在は嬉しいと思うし。まあとりあえず電話からしてみたらいいんじゃないですかね」
「そうか……ありがとう、その方が良い気がしてきた」
そりゃよかった。
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