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愛のしるし(社会人四年目:年始)1

 年が明けて元旦の朝。  目覚めて隣へ視線を向けると、ハルが居た。スゥスゥと規則正しい寝息を繰り返している。俺の方が先に目覚めた事に頬を綻ばせながら、肘をついて身体を起こした。  眠っているハルの唇にそっと唇を重ね合わせ、ハルが起きないようにとすぐに離れる。直後、ハルの口角がじわじわとあがり、ゆっくりと目蓋が開かれた。 「……あ」 「おはよう省吾。明けましておめでとう」 「おまっ……起きてたな? 寝たフリかよっ」  慌てた俺を見つめて満面の笑みを浮かべながら、両手で俺の両頬を包む。 「もう一度キスして、省吾から」 「うるせぇ、しねーよ」  顔が熱い。絶対耳まで赤くなってる。年明け早々俺を騙すなんて、とんでもねぇハルだ。くそ。  ハルは含み笑いを浮かべながら、ちゅうと唇に吸いついた。そのまま俺の身体を隣へ押し倒し、今度はハルが俺を見下ろす。  額から瞼、鼻先、頬、唇へ。いつもと同じ様に流れる様なキスをして、それから小さな吐息を漏らした。 「年明け早々、幸せすぎて胸が苦しい。省吾からキスしてくれるなんて」 「……あっそ、安い幸せだな」  素っ気なく返しても、ハルは嬉しそうに微笑んだままだ。耳まで熱いから、多分俺は茹でタコみたいに真っ赤になってるんだろうな。  安い幸せなんて言ったけど。  俺なんてハルが隣に居ると確認しただけでめちゃくちゃ幸せな気持ちで一杯になったんだから、似たようなもんだ。  どちらからともなくお互いに身体を引き寄せ、抱きしめ合う。鼻先を擦り合わせ、悪戯なキスを繰り返す。  愛してるよと囁かれ、小さな声で俺もと呟く。俺達は肌を重ねて、お互いの身体を求めあった。

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