219 / 428

愛のしるし 2

◇◇  ハルが作ってくれた雑煮をふたりで食べ終え、早く実家にいけといっても俺の傍から離れずにぐずぐずしているハル。 「新年の挨拶は早くいかねぇと。今から出ないと昼にはつけないぞ」 「省吾は何時にでるの」 「十六時時集合だから十五時前には出る」 「ふぅん、誰が来るの」 「言ってもわかんねぇだろ……多分晃と完治と柳瀬と水島と田中とかかな。彼女連れて来る奴もいると思うし、まあ大人数」 「高校時代の友達?」 「いや、ほぼ中学時代の仲間だな。晃と完治と柳瀬は小学から……ってそんな事聞いてどうすんだよ」 「省吾の交友関係を頭に入れておく。今度卒アル見せて」 「げ、やだよ」  面倒臭ぇ会話だなと笑いが漏れる。俺の地元仲間の情報なんて頭に入れてどうするつもりなんだか。こいつの事だから、卒アルなんて見せたら本当に全校生徒の顔と名前を覚えてしまいそうで恐い。  改めて奴等の名前を挙げたら何だか懐かしくなってきた。  最近すっかり正月位しか会わないから情報が回ってこないけど、そろそろ結婚した奴とかも出てきてるかもしれないな。  などと考えながらふとハルに視線を戻すと、眉間にシワを寄せて俺をじっと見つめている。どうしたと聞くより先にぎゅうと抱きしめられた。 「……淋しい。地元の友達が羨ましい。俺の知らない省吾を山ほど知ってるんだ」 「何だそりゃ。それ言ったらお前の方だってそうだろうが」  抱き着かれたままの格好で、こたつの上の日本酒を中央へ寄せた。  久保田の萬寿が零れたら勿体ない。 「それはそうだけど」  それでも不満げなハルの声。地元仲間と張り合ってどうすんだよ、全く。 「でも俺は地元の奴らが知らないハルを知ってるし、ハルだって、誰も知らない俺をお前だけが知ってる。そっちのがすげぇじゃん」  思った事をそのまま口にしたところで、バタリと押し倒された。  久保田を避難させておいて良かった。  見上げればこの上なく嬉しそうなハルの顔。まあよくコロコロと表情がかわるもんだと感心する。  こんなところも多分俺しか知らないんだろうなと思えば、自然と頬が緩む。優しいハルも面倒なハルも、クソ恐ろしいハルも、まとめて全部愛しく思う。……まあ、悪魔スイッチはなるべくオフでいて貰いたいけれども。

ともだちにシェアしよう!