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愛のしるし 5
「ふぅん」
軽く鼻を鳴らし、俺の髪から手を離した晃は薄ら笑いを浮かべた。
「? 何だよ」
「色気が出てる。自覚ないのか」
「色……は?」
「あからさまにマーキングされてるし。独占欲の塊みたいな女だな」
晃が自分の首に軽く人差し指を当てるのを見て、ふと自分の首に触れてみる。
……まさか。
固まった俺が可笑しかったのか、鏡見てこいよと笑う晃。
「お、省吾来たのか、こっちきて飲もうぜー」
背後から完治の声が聞こえたけれど、俺は一目散にトイレへと駆け込んだ。
「……何だこりゃ」
鏡に映った自分の首筋には真っ赤な印。
見える所にはお互い絶対跡はつけないと約束していたはずなのに、正月休みで跡が消えると見込んでの確信犯か。晃の言う通り、マーキングと言われても仕方ないくらいに目立つ。ふっざけんなくそ。
(今朝のあの時につけやがったな、あいつ)
シャツの襟を立てたら隠れるかなと四苦八苦しているところに、晃が入ってきた。くそ、笑いにきたのか。
「女いるの隠す必要ねぇだろ」
鏡越しに、白けた表情の晃と目が合う。
「……別に」
「何で隠すんだ、俺には言えよ」
「……別に。てか何だよ晃、いい加減しつこい。晃の方はどうなんだよ、前の女とは続いてんの」
話を逸らしたくて晃に話題をふってみても、面白くない表情で返された。
「前の女がいつの女かわかんねぇけど、とりあえず今付き合ってる女はいるよ」
「あっそ。変わんねぇな」
何とか隠れそうだとシャツを整え振り返ると、真後ろまで詰め寄ってきた晃にぎょっとした。近いし、なんか怒ってないか。
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