222 / 428

愛のしるし 5

「ふぅん」  軽く鼻を鳴らし、俺の髪から手を離した晃は薄ら笑いを浮かべた。 「? 何だよ」 「色気が出てる。自覚ないのか」 「色……は?」 「あからさまにマーキングされてるし。独占欲の塊みたいな女だな」  晃が自分の首に軽く人差し指を当てるのを見て、ふと自分の首に触れてみる。  ……まさか。  固まった俺が可笑しかったのか、鏡見てこいよと笑う晃。 「お、省吾来たのか、こっちきて飲もうぜー」  背後から完治の声が聞こえたけれど、俺は一目散にトイレへと駆け込んだ。 「……何だこりゃ」  鏡に映った自分の首筋には真っ赤な印。  見える所にはお互い絶対跡はつけないと約束していたはずなのに、正月休みで跡が消えると見込んでの確信犯か。晃の言う通り、マーキングと言われても仕方ないくらいに目立つ。ふっざけんなくそ。 (今朝のあの時につけやがったな、あいつ)  シャツの襟を立てたら隠れるかなと四苦八苦しているところに、晃が入ってきた。くそ、笑いにきたのか。 「女いるの隠す必要ねぇだろ」  鏡越しに、白けた表情の晃と目が合う。 「……別に」 「何で隠すんだ、俺には言えよ」 「……別に。てか何だよ晃、いい加減しつこい。晃の方はどうなんだよ、前の女とは続いてんの」  話を逸らしたくて晃に話題をふってみても、面白くない表情で返された。 「前の女がいつの女かわかんねぇけど、とりあえず今付き合ってる女はいるよ」 「あっそ。変わんねぇな」  何とか隠れそうだとシャツを整え振り返ると、真後ろまで詰め寄ってきた晃にぎょっとした。近いし、なんか怒ってないか。

ともだちにシェアしよう!