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愛のしるし 6
「わ、近いよお前……なに絡んでんだよ正月から」
「うるさい」
折角整えた襟に手をかけられ、首を剥き出しにされた。俺より数センチ背の高い晃の顔が、めちゃくちゃ近い。久々に会って機嫌をそこねた理由がよくわからない。ハルとはタイプが違うけど、こいつはこいつで怒らせると面倒くさい。すぐ手が出るし。
「お前が俺に隠すとか、ムカつく」
ああ、と思い出す晃の性格。
近所で兄貴分の晃は昔から俺を可愛がってくれた。
人見知りで自分から友達を作ろうとしない俺を遊び場に連れていったのは晃だし、中学で初めて好きな女が出来た時には速攻バレて、頼んでもいないのに女の扱いを伝授されたり、俺がイキった奴等に絡まれたら翌日は相手をボコボコにしてくれちゃってたり、周りから見ても俺は晃に特別可愛がられていたと思う。
ただ根底にあったものは、一種の束縛。
何でも一番に伝えないと、晃は不機嫌になる。
お前の一番は俺だろうとよく言われたし、まあ実際そうだったから特に突っ掛かりもしなかったけど、煩いなとは思っていた。
大学に入って地元を離れてからはちょうど良い距離感でいられたし、たまに帰って一番に会いに行けば、喜ぶ晃は優しい兄貴だった。
「お前、ノンケだよな」
「は?」
突然の質問に、思わず間抜けな声を出してしまった。晃がそんな言葉を使う事に驚く。
「色気がさ。お前、以前はこんなんじゃなかった」
威圧感のある目で見下ろされ、言葉に詰まる。晃は俺の何を疑っているんだ。
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