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愛のしるし 8
「あ、お前なにそれ赤いのふたつもつけて! これみよがしにすげぇな、どんな女だよ。ウケる」
げらげらと笑い出す完治に向き直る。
「うるせえ。てかこれすぐ消す方法教えろ完治」
「ばーか、ンなの知るか。あ、まさか今晃につけられた?したらマジうける」
「は? ば、ばっかじゃねーの、ンなわけあるか!」
ぎょっとして声を荒げた俺に、完治がシッと人差し指を立てて顔を近づけてきた。
「お前知らなかったっけ? 晃、バイだって公言したの」
バ……。
思わず口を開けたまま固まった俺を気にする事もなく、完治は言葉を続けた。
「まあ晃の事だし、聞かされた時は皆驚いたけど、へぇマジ?って程度だったな。いつだっけ、結構前だぜ……確かあれだ、お前が初めてあの子をこっちに連れてきた夏」
「あの子?」
「京香ちゃん。めちゃめちゃ美人の」
ああ、と過去を思い出す。
付き合い出してすぐの夏休みだ。
付き合いたてで俺も少しは気を使っていた頃、地元の友達に会ってみたいとしつこく言われて、まあいいかと珍しく地元に彼女を連れて行ったんだ。
後にも先にもあの一回だけだけど。
「すげぇ前の話じゃん。全く聞いてないぞ、そんな話」
「だってお前、正月しか帰ってこねぇし連絡もロクにしねぇし。正月は正月で皆テンションあがってるし、大体晃の事をネタに出来る奴なんてあんまりいねぇだろ」
まあ確かに、と納得する。晃を弄れる奴なんて、晃の先輩か同級生のあの人位しか思い浮かばない。
(それにしても公言て……)
晃がバイセクシャルだなんて、全く気付かなかった。いつも綺麗な女達に囲まれて、堂々と平行して複数の女と付き合うようなとんでもねぇ奴だったけど、男と付き合っていたとか、それを匂わす様な事も、多分一度も聞いた事はない。
晃を変える何かが、あったのか。
(でもまあ、本人から聞かされてなきゃ、知らないふりをした方がいいか……)
そんな事を考えながらふと鏡に映る自分の姿を見て、ハッと思い出す。
そんな事よりも今はこのとんでもねぇ跡をどうにかする事の方が、今の俺には重要だ。
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