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愛のしるし 11
◇◇◇
今年の宴会は過去最多の人数らしい。知らない人間が沢山いる。
(こんな宴会なら、無理してくることなかったな)
知らない奴と話すのは面倒だから、俺はずっと晃の近くで昔馴染みの数人と酒を飲んでいた。
二十時を過ぎた頃店を出て、歌いに行く連中と次の店に移動する連中に分かれる中、俺は帰ることにした。
「何言ってんの省吾。まだ八時だぜ」
「今住んでる所ここから遠いし、明日用事があるんだよ」
酔っ払いに腕を掴まれながらも帰ると主張する俺に、晃が声をかけた。
「わかった省吾、あと一時間だけ付き合え。俺んち駅前だし、すぐ帰れるだろ」
晃のアパートか。確かに駅前だし、次の店に付き合わされるよりは良いかと考えて、わかったと答える。
「あ、じゃ俺も晃んち行く!」
柳瀬が会話に加わり、結局彼女を連れて来なかった数人が晃のアパートへ移動する事になった。
近くのコンビニで酒を買い込み、騒ぎながら皆と歩く夜道はなんだか懐かしい。今じゃみんな立派な社会人で見た目は大人のくせして、古い仲間で集まるとこんな調子に戻る。変わらないものがあるという安心感。
この感覚に会いたくて、俺は毎年正月に帰って来るのかもしれない。
「何ニヤついてんだよ省吾」
隣を歩く晃に声をかけられて、ははっと小さく笑う。ニヤついてたのか俺。
「皆変わんねぇなと思ってさ」
「こういう時はな。省吾、地元が恋しくなっただろ」
「んー、まあな。嫌いじゃない」
「帰って来いよ」
「はは、職場埼玉だっての。通ったら通勤でしぬわ」
笑ったところでアパートに到着し、懐かしい建物を仰ぎ見る。
「外観、更にボロくなってんな」
見上げたまま笑うと、うるせぇとわき腹を殴られた。
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