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愛のしるし 12

「啓二さ、とうとう実家継ぐ事にしたらしいぜ」 「あのカメラ屋? あいつリーマンしてたじゃん」 「親父さんの具合悪くなったとかで、会社辞めたらしいよ」  地元話に花が咲く中、俺はベッドに寄りかかりながらウトウトし始めていた。 「省吾? おーい、寝ちゃったらまずいんじゃねえの?」 「何飲んでん……げ、誰だよ酒作った奴。めちゃめちゃ濃いぞ。省吾は弱いんだから加減してやれよ」  周りの声がぼわんと脳に反響する中、俺はのろのろと立ち上がった。  とりあえず帰らないとヤバイ、という頭だけは残っているのが人間てもので。 「今帰らせたら確実に乗り過ごす。省吾少し寝ていけ、終電までには起こすから」  晃の声が聞こえる。それもそうかと頷くと、もそもそとベッドによじのぼり、枕に顔を押し付けて目を閉じた。  晃の匂いがする。昔からよく知ってる匂いだ。安心する。  だんだんと意識が薄れて、すうと眠りに落ちていった。 ◇◇  突然パチリと目が覚め、慌てて起き上がる。 「お、起きたか」  こたつに入ってテレビを見ていた晃がこちらを振り向いたが、他の奴等は見当たらない。 「あれ、他の奴等は」 「女友達が近くで飲んでるって連絡入って、漁りに行った」  ありえる話でぶぶぶと笑う。まあ彼女居ない男達だからな、そりゃ行くか。 「正月からバカだな。晃は行かなくて良かったの」 「お前を起こす役目があるのに行けるか」  真面目に答える晃が妙におかしくて、少し笑った。  時計に目をやると、時刻は二十二時を回っている。  二時間程寝たせいか、酔いの回りも落ち着いた気がする。

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