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愛のしるし 15

(嫌、だ)    嫌悪。  ハルの時とは全く違う、激しい嫌悪感に吐きそうになる。頭がついていかない。なんでこんな事になってるんだ。晃は俺の、兄貴みたいなもので。  こんなのは違う。  こんなのは違う。  こんなのは……。  唇を塞がれたまま、顔を左右に振っても離して貰えない。自由になった片手で晃の身体を押し返してもびくともしない。晃の舌が俺の舌に絡みついて、ひきちぎられる程に強く吸い上げられる。痛い。苦しい。口内をめちゃくちゃに犯されて、どろどろになっていく感覚。暴れたら歯が当たって、口の中に血の味が広がった。どっちの血なのかすらわからない。  なんでこんな。  これまでの関係が崩れていく。どうしてこんなことになったんだ。晃はそれでいいのか。 「俺はずっと我慢してきたのに、その男はどんだけお前に触れてたんだよ」  シャツを捲くり上げられて、剥き出された肌を晃が見下ろす。胸の尖りに噛み付かれて、ひっと悲鳴に近い声を上げた。 「ここも散々弄られてるんだろ」  滲んだ血を舐められ、また噛み付かれて、更にぎりぎりと引っ張られる。痛みに堪えながら、自由になった口で何度も呼吸を繰り返す。覆いかぶさっていた身体を起こした晃を睨み上げても、冷えた眼で俺を見下ろし眉ひとつ動かさない。体中の筋肉が強張るのがわかる。怖い。 「乳首さわっただけで感じるほど、その男とやりまくってんのか省吾」  やっと自由になった口で、何度も呼吸を繰り返す。 「俺がずっと我慢してきたのに、その男はどんだけお前に触れてたんだよ」  突然カチャリと金属音が聞こえ、晃の手が俺のベルトにかかった事に気付く。 「なに、す」 「もっと早くに……俺がお前を最初に抱いてたら良かった」 「晃、やめっ……触るなっ」 「黙れよ省吾、俺に命令するな」 「あきっ……」  再び唇を塞がれて、口内を犯される。水音が耳に響く度に、嫌悪感が膨れ上がる。こんな音聞きたくない。 (嫌だ、あきら、やめてくれ)  心の中で叫んでも、晃は動きを止めてくれない。ジーンズを下着ごと引き降ろされる。  晃の指先が半勃ちの俺を掴み先端に指をかけると、滲み出た液をぬるりと引き伸ばし、それを何度も繰り返す。  この男は誰だ。こんな男知らない。 (晃……)

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