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愛のしるし 18

「……泣くほど嫌か」  小刻みに震える息を隠せない。目尻から生温かいものが溢れて頬を伝っていく。頭でこれが涙だと理解すると更に溢れ出し、何度も何度も流れ落ちた。 「嫌いに……させんな、」  揺れる視界の先で俺を見下ろす晃の表情はわからない。  ずるりと引き抜かれる感触に、全身が震えた。 「……晃が、好きだ……嫌いに、なりた、ない」  ヒックと喉が動いてうまく言葉が出せない。伝えたいのに。 「……省吾、それは俺が本当に欲しい『好き』とは違う」  髪から離れた晃の指先が、俺の目尻を拭う。 「俺よりお前を想ってる奴なんていやしない、ガキの頃からずっと大事にしてきたんだ」  総てが滲み何も見えない俺の耳に、晃の声が響く。 「それでもお前は、そいつの方がいいのか」  違うんだ、晃。全然違うんだよ。ハルは……。  もう誰とも比べる事なんて、出来ないんだよ。 「そんな顔して泣くな……省吾」  晃の指先が、何度も俺の涙を拭う。  何言ってんだばか。泣かせたお前が言うなよ。  ふざけんな。好き勝手しやがって、俺をなんだと思ってるんだ。  お前は、俺の……。

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