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愛のしるし 19
「見んな、ムカつく……」
精一杯の悪態を搾り出した俺の頬に、ぽたりと雫が落ちた。
ぽたり。温かい。これはなんだ。
晃の腕が俺の背中に回り、震えが止まらない俺の身体をぎゅうと抱きしめた。
抱きしめられた俺は固く目を閉じ、そして晃の身体も震えていると気付く。
晃の濡れた頬が俺の濡れた頬に触れ、それから耳元で、聞き取れない程のかすかな声を感じた。
「 」
俺は抱きしめられたまま、ぼんやりと天井を見上げた。
暗くてつまんねぇ子供だった俺を、明るい場所へとひっぱってくれた。いつでも強引で文句言っても聞きゃしなくて、でもほんとは嫌じゃなかった。
くだらねぇ事が大半だったけど、大事な事も教えてくれた。晃がいたから、この街も好きになったんだ。晃が居なかったら、今の俺はきっと居ない。
震える晃と、震える俺。
俺たちは、失いたくないんだ。
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