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愛のしるし 21

 風呂を出て、テーブルに放り投げていたスマートフォンに着信通知が出ている事に気付く。手にとると、ハルから三件の着信が入っていた。  ため息をついてそれをテーブルへと戻し、替えの服あったかなと箪笥を漁っていると、テーブルの上のスマホに着信が入った。  ハルかな、ハルだろうな。  今ハルの声は聞きたくない。  多分泣く。俺が。でも。  少し考えてからスマホを取りに戻ってみれば、着信表示は晃だった。無視しようかとも思ったが、少し悩んで通話ボタンを押す。 『……今、どこだ』 「実家」 『帰らなかったのか』 「ああ、やめた」 『……そうか』 「用無いなら切るぞ、風呂上がりで寒いし」 『そっち行ってもいいか』 「やだよ。寝る」 『すぐ帰る、部屋には上がらない』  晃には逆らえないという、子供時代に植え付けられた服従心のせいだろうか。俺は渋々了解し、通話を切った。  晃のアパートから俺の実家までは歩いて十分もかからない。  電話を切り、箪笥から引っ張り出したスウェット上下を着込んでお湯が沸いた頃に、晃から再びの着信が入った。 『着いた』  玄関を出て下の道路に目をむけると、ぼんやりと光る外灯の下でアパートを見上げる晃が見えた。  部屋着のまま階段を降りた途中でめちゃくちゃ寒いと気付いたけれど、戻るのも面倒だからそのまま階段を降りた。  晃は少し目を開いて俺を見下ろし、それから自分の頭を搔いた。

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