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愛のしるし 22

「何だその格好。寒いだろ」 「出て気付いた。けど面倒臭いから戻るのやめた。早く用件言え、寒いし」 「それじゃ公園まで連れ出せねぇな」 「いかねぇし、用件あるならここで言え」 「家にあげろ」 「は? 部屋には入らないって晃が言ったんだぞ」 「そんな格好じゃお前が風邪ひくし、言いたい事はちゃんといって帰りたい」  明日にはお前帰るんだろ、とふてくされたようにいうもんだから、俺は大きく溜め息を吐き、アパートの階段を上り始めた。 「言いたい事言ってさっさと帰れ」  サンダルで階段を上る掠れた足音が深夜の夜空に響く。その後に晃も続いた。  玄関を開けてお湯を沸かしっぱなしだったと気付き慌ててコンロの火を止めると、後ろからぷっと吹き出す声が聞こえた。 「相変わらず抜けてんなお前は」 「煩い、たまたまだ」  マグカップをふたつ取り出し、インスタント珈琲を適当に入れてお湯を注ぐ。晃はブラックだからそのままドンとテーブルに置いた。 「さんきゅ……お前、まだ砂糖入れなきゃ飲めないのか」  ざらざらと砂糖を入れてかきまぜる俺を見る晃は、いつもの優しい顔だ。子供の頃から一緒に居る晃は、俺の嗜好をよく知っている。 「別に飲めないわけじゃない。けど入れたほうがうまい」  ぷっと晃が吹き出した時、俺のスマホに着信が入った。ハルだ。電話に出ようとしない俺を晃はじっと見つめる。 「出ろよ、電話」  晃の言葉を無視して伏せたスマホを部屋の隅に追いやると、晃は目を細めて鳴り続けるスマホを眺めた。

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