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愛のしるし 26
◇◇
ほんの1日空けただけなのに、何とも言えない懐かしさを感じながらドアの前に立つ。鍵を差し込むとカチャリと開いた。ハルは居るだろうか。
玄関に入って直ぐにハルのスニーカーが目に入った。
(居る……)
寝てますようにと願いながらリビングの扉をゆっくりと開けると、ソファに座るハルの後ろ姿が見えた。テレビはついていない。しんと静まり返った部屋の中、窓の外から聞こえてくる鳥の囀りだけが小さく響く。
「……ただいま」
恐る恐る声をかけてみるも、返事がない。
もしや眠っているのではとわずかな期待を抱いた瞬間。
「随分と早い帰りだね」
こちらを振り向きもせず放たれた声に、俺はその場に立ちすくみ、もそもそと言葉を返した。
「……終電、間に合わなくて」
「連絡貰ってから、俺は何度も電話したよね」
「……」
「何で出なかった、気付かなかった?」
「……」
「友達と居たって電話位出れるだろ」
「……」
「それとも電話も出たくない程、隠したい存在なのか俺は」
「な、違」
「それとも出れないような事してたのか」
「違……」
「じゃ何だよ!」
ハルの大声にビクリと身体が震えた。
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