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愛のしるし 27
言葉に出来ず立ちすくんだままの俺に痺れを切らしたのか、不意に立ち上がり振り返ったハルは物凄く怒った表情で、俺はビクリと身体を震わせた。
「ここへ来て」
言われるままにおずおずとソファを周り、ハルの隣に立つ。
窓から朝日が差し込む明るい空間で俺を見下ろしたハルは、眉間に深くシワを寄せた。
「どうした、その顔」
俺をソファに座らせ、目の周りをそっと撫でる。
「泣いたのか」
「違……飲み過ぎて」
「飲んだ腫れ方じゃないだろう、何があった」
「別に、なんも」
「あの男と何かあったのか」
ハッとして顔を上げると、ハルはギュッと眉を寄せて俺を正面から見つめた。
「実家の前まで迎えに行ったら、電話をしながら男が歩いてきた」
見られてた……。
途端に心臓が音を立てはじめた。
あの時は話をしただけだ。何でもない場面だった筈だと自分に言い聞かせても、じわりと汗が滲んでくる。
「そしたら省吾が降りてきた。すぐに帰るかと思ったら、ふたりで階段を上っていった」
「あれは、晃は友達」
「俺もそう思ったよ、だから電話した。出たらすぐに連れて帰るつもりだった」
「……」
「何で出なかった?」
「話してて、でもすぐ帰っ……」
「あの時間にわざわざ来る程の用事か」
ハルの目つきが変わる。と同時に手が上がり、反射的に身体が震えぎゅっと目をつぶった。
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