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愛のしるし 28
ハルの両手が俺の両頬を包み込んでいる事に気づき、ゆっくりと目を開けると、傷付いた表情のハルが俺を見つめていた。
「俺に、怯えたのか?」
「ちが……」
「じゃあ何に怯えた」
「ちがう」
「省吾、何があった」
繰り返されるその問い掛けに答えられず、目を逸らした俺をハルは見逃さなかった。
顎を掴まれ、顔を戻された俺はたまらずその手を跳ね退けた。
「なんもねぇし、ほっとけよ!」
叫んで息を吐いた後、じわじわと後悔が襲う。
「ハル……」
「わかった」
突然立ち上がったハルを見上げると、凍りつくような冷たい表情で見下ろされ。
「省吾が言わないならもういい」
玄関へと向かうハルを慌てて追いかけ、腕を捕ったその手を振り払われた。
「ハル、どこ行くんだよ」
俺の問いに振り向きもせず、車のキーを掴むとそのままドアを開けて出ていった。
出ていってしまった。
「初詣行くって……言ってたくせに」
追いかける気力も出ず、ずるりと壁に寄り掛かる。
踏んだり蹴ったりだなと、乾いた笑いが漏れた。
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