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愛のしるし 29

 あいつ、どこへ行ったんだろう。  帰ってくるかな。  帰って来なかったらどうしよう。  俺の事が嫌になって、ここを出ていくのかも。  そうなったらハルの事だから、次の住家を決めて、引っ越し業者も即手配して、一瞬で引き払いそうだ。  俺、独りになるな。  家賃高いし、そしたら俺も引っ越そう。  そうだ、古巣に戻ろう。  アホ木もいるし。  そしたら淋しくない。  でも。 「ハルが居ないのは、嫌だな……」  駄目だ、昨日からもう俺は駄目だ。  涙腺が壊れたんだ。  両目からボタボタと涙がこぼれ落ち、俺はその場にしゃがみ込んだ。  うまくいかない。  色んな事がうまくいかない。  悪いのは全部中途半端な自分だ。  でもじゃあどうしたら良かったんだろう。  もそりと立ち上がり、寝室へ向かう。  コートを脱ぎ捨て、そのままベッドに倒れ、目を閉じた。  眠って、目が覚めたらきっと隣にはハルがいる。  締め付けられても文句いわないから、しぬほど抱きしめて、笑ってほしい。  ハルの隣で、眠りたい。

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