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愛のしるし 31
『晃に聞いても詳しい事言わねぇし、お前なら何か知ってるかと思ってさ……省吾? おい聞いてんのか』
「わり、切る」
何か言ってる完治を無視して通話を切り、近付いてきたハルを見上げると、頬骨の辺りが何かを掠めたように赤紫色に腫れている。
「ただいま」
ただいまじゃ、ねーよ……。
「どこ行ってた……」
ハルはそれに答えず、ベッドにあがると勢いよく俺の身体を引き寄せて力一杯抱きしめた。確かにさっき自分で、締め付けてもいいから抱きしめてほしいと願ったけれど、実際やられると死ぬほど苦しい。骨が軋む。多分折れる。
そのまま押し倒され、ベッドの上に転がるハルと俺。
「ハルっおい……」
言い切る前に唇を塞がれ、ちゅううと音を立てて吸い付かれた。
帰るなり蛸かこいつは。
唇が離れると今度は俺の額に、瞼に、頬にキスを落とし、そして再び唇へと戻り、今度はゆっくりと、味わうように重ね合わせる。
聞きたい事は沢山あるのに、ハルが帰ってきてくれた事と、俺の身体を抱きしめるハルの腕の強さと、重なり合う唇の優しさが嬉しくて……身を任せた。
肌を寄せ合い、ハルは俺の首筋に顔を埋め、吸い付くようにキスをした後、耳元で囁く。
「省吾……俺の予想と予感は、大抵当たるんだ」
顔をあげたハルに真っ直ぐな瞳で見つめられ、途端に心臓が苦しくなる。切なげに眉を寄せて、優しく俺の頬をなでるハルの手は冷たくて、俺はその手を温めるように自分の手を重ねあわせた。
「だから省吾……俺に隠したり嘘ついたり、するな」
苦しそうな表情に、泣きたくなる。そんな顔をさせたのは、俺なんだ。
「……ハル、」
「今朝は怒鳴って……ごめん」
そう言うと今度はハルの胸に顔を押し当てられ、再びぎゅうと抱きしめられた。
苦しい、けど。
俺はハルの胸に頬を擦り寄せ、両腕を背中に回した。ハルの心臓の音が聞こえる。ハルのにおいがする。
そうだ俺、昨日からずっと、こうしたかったんだよ……。
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