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愛のしるし 32

「……晃に、会ったのか」 「うん」 「……怒ってないか、俺の事」 「何で怒るんだよ」 「……俺の事、嫌いになってないか」 「……省吾はばかなの?」  ムカ。 「冷静に言うなてめぇ」 「頭にきてるよ、晃と自分に」  再びぎゅぎゅと締め付けられる。既に骨は悲鳴を上げている。あとどのくらい耐えられるだろうか。 「殺してやろうかと思ったけど、省吾の顔を思い出してやめたんだ」  そりゃあよかった。あの晃が入院てだけでも俺にはかなりの衝撃だ。ハルが切れると恐ろしいという伝説がまたひとつ増えてしまった。誰にも言えないけど。 「ハル、晃は……今回は正直ショックがでか過ぎて、まだ許すとか許さないとか考えられないし、なんにも言えねぇけど……子供の頃からずっと兄貴みたいな奴で……俺の大事な」  そこで言葉を切り、ハルの胸に額を押し付けた。 「……できるなら、時間かけて……もとに戻りたい」 「あっちも、同じ事言ってたよ」 「……そか」 「……うん」  最後に見た晃の顔を思い出す。晃はハルと、どんな気持ちで対峙したんだろう。晃がキレたら、ハルもこんな程度の怪我ですむはずがない。きっと……。 「ハル」 「うん」 「無茶すんな頼むから」  ハルに関しては、普段冷静なくせにキレると何しでかすかわからないと改めて学んだ。俺も無駄な心配をかけないように、気をつけよう。 「省吾、呆れた?」 「はは、呆れたっつーか心配が増えた」 「なんの心配だよ?」 「……それよかさ、いいのか」 「何が」   もごもごと口を開いた俺を、ハルは怪訝な表情で見つめる。

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