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愛のしるし 34

「……お前が気にすんなよ、もう過ぎた事だしさ」  背中に回していた両手の平を上へと滑らせ、ハルの柔らかな髪を撫でた。 「省吾の口でそんな事言わないで、省吾が傷つく」 「わかった、悪かった……」 「やっぱりあの男許せない、殺しても足りない」  憎憎しげな表情で、恐ろしい言葉を口にしている。ハルがうっかり犯罪者にでもなってしまったら大変だ。 「そ、そうだハル、晃は入院した!」 「ふぅん、そうなの?」 (少し機嫌良くなるとかやっぱりコイツは鬼だな……)  晃の肋骨が二本折れていたと聞くのはそれから少し後の話だ。  そういえばと、ハルに疑問を投げかける。 「どうやって晃の居場所知ったんだよ。そもそもお前、俺が何かあったとしたって晃が関係してるかなんてわかんねぇだろ」 「晃の名前は以前も何度か聞いていたし、昨日の面子を聞いた時に一番に出た名前は晃だった。省吾が地元で一番信頼している人間は晃とみてほぼ間違いない」  そういえば、と昨日の会話を思い出す。確かに俺は無意識に、晃から名前を挙げていた。 「それから、秋に引っ越しした時に、何年か前の正月の写真が出てきただろ」  大人数でボード行った時の集合写真か。机に入れっぱなしだったのを引っ越しの時に見つけて、確かにハルに見せた。俺の隣に並ぶ晃の事をしつこく聞いてくるハルに、煩せぇと一喝した事を思いだした。 「あの豆粒写真か?」 「全員の顔と特徴は記憶していたから、その中の人物を見つけて晃の居場所を聞いてまわった」  こいつ。  無駄に記憶力は良いと思ってはいたが、やっぱ怖い。

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