252 / 428

愛のしるし 35

「昨晩何かあったなら、あの時間に独りで現れた晃は必ず何かを知っていると思ったから、まずは晃との接触を試みた」 「……晃が簡単に口を聞くとは思えねぇ」 「名前を言ったら俺の事知ってたよ」  ハルの名前を出してしまった事を思い出した。 「……でボコったのお前」 「信頼していた相手に傷付けられた省吾の分と、俺の省吾を傷付けられた俺の分。大丈夫、説明はしたしあの男も甘んじて受けた。合意の結果だ」  合意って。 「……わかった。とりあえず落ち着いたら、晃んとこ行こう」 「嫌だ」  嫌だって……お前は子供か。 「お前が行かないなら俺独りで行ってくるよ」 「……もっと嫌だ」  嫌だ嫌だと首を振りながら俺を抱きしめるハル。  ……好きだよ、ほんと。お前の事。 「んじゃ一緒に行くしかねぇよ。で、ちゃんと言う」 「何を」 「決まってんだろ。怪我させた謝罪と、お前をちゃんと紹介するんだよ」  何でも一番に話をしていた、晃に。 「……あんなことされて省吾」 「しょうがねえよ。だってあいつ、俺の一番だし」 「何だよ一番て」 「一番は一番だよ」 「何だよそれ、俺は一番じゃないのか」 「お前は一番じゃねぇよ、全然別。枠が違う。お前は俺の……唯一の、特別」  言ってから恥ずかしくなって、ハルの身体をぎゅうと抱きしめた。  ハルがどんな顔していたか見えなかったけど、骨が折れるかと思う位強く抱きしめられて、それでも嬉しいと思う俺は、下手したらMに片足を突っ込んでいるのかもしれない。

ともだちにシェアしよう!