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幸せになる方法 5
それから店内を一回りし、選んだ具材はマグロ、イカ、エビ、サーモン、煮穴子、ホタテ、あとハルが作る卵焼き。
昆布で炊いたご飯で酢飯を作り(作ったのはハルだけど)海苔の上に小分けして乗せていく。
それを平らに伸ばして大葉を敷き、具材を乗せて巻いていく。
「一本一気に食べるから、余り太くない方がいいね」
「丸々一気にか?」
「そうだよ、願い事を思い浮かべながら一気に食べる」
「ふぅん」
変な行事だな。
出来上がった恵方巻は、明らかにハルの方が美味そうに見えた。いや材料は一緒なんだから味は同じはずだ……多分。
「俺、省吾が作った方を食べたい」
「え、お前の方が断然美味そうだけど」
見た目からして食べ辛そうな俺の恵方巻をハルが欲しがるもんだから、まあいいかと交換してやる。
「省吾、恵方巻食べるの初めて?」
「行事としてマトモに食うのは多分初だな」
「そうか、俺も初めてだ」
「なんだよ、だったら別にやらなくてもよくねぇか」
普通に食った方が美味いよ多分。何たって海鮮だし、どうせなら味わって食べたい。
がしかし、俺の意見に対して嫌々と首を振るハル。
「一緒に行事を遂行することに意義があるんだ」
「ふぅん、まいっけど」
こいつのこういうこだわり、毎回わかんねぇな。
まあでも、楽しそうにしてるから、まあいいか。
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