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二月十一日 2

◇◇◇  土偶展は俺の予想を遥かに上回る混雑っぷりで、正直驚いた。  なんだよ土偶大人気。縄文のスーパースターとやらを舐めていた。  長蛇の列をなんとかクリアし、入場した時点で既にグッタリの俺とは対称的に、宝物に囲まれた子供のような表情のハル。 「わあ……省吾見て、この土偶は凄いんだよ」  大混雑の会場の中、ハルは俺の腕を引っ張り展示物の前に入り込むと、俺からしたら謎の土人形だけど実は凄い国宝だという土偶の前で、目を輝かせながら早速薀蓄を傾け始めた。  気が付けば便乗して耳を傾ける周囲の人々。へぇだのほぉだの聞こえて来る。  完全に高揚しているハルの様子を見ていた若い女の二人組が、あの人カッコイイなんてコソコソ話をしている。 (こいつの容姿は人目をひくからな……)  出来れば目立たないで居て欲しいのにと人目を気にして下を向く俺に気付きもしないハルは、次々と俺の腕を引っ張ってはひとつひとつ丁寧に説明をして回った。  そのうち俺まで、土偶良いななんて洗脳され始めた頃。ハルにコソリと耳打ちされた。 「さっき、近くにいた女の子達が省吾を見てカッコいいとか言ってたよ。気に食わないな、会社でもああいう事あるのか」  アホか。  俺じゃねーよ、俺の隣のおめーだよ……。  会場を出た頃にはすっかり日は暮れていて、ぐぅと腹も鳴り出したハルと俺。 「なんか食って帰ろうぜ。お前の食いたいもん何、奢るし」 「河豚」 「……」  ニコニコしながら素直に高いもん要求してきやがった。  まあいいかと歩きだす。個室でのんびり出来そうだしな。 「河豚の白子も焼いて食べたい」 「はいはい、好きなもん食えよ。誕生日だし」  隣に並んだハルが、俺の顔を覗き込むようにして微笑んだ。 「何だか今日は異様な程に省吾が俺に優しい。誕生日効果なのか」 「何だそりゃ。まぁ誕生日だしな」 「手を繋いでもいい?」 「調子のんな、離れろ」  今日の俺が優しいのかどうかわかんねぇけど、そしたらそれは多分、お前があんまり嬉しそうにしてるからだ。  と思ったけど口にするのはやめておいた。

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