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二月十一日 3
◇◇
帰宅した頃にはいい気分に酔いもまわり、ふたりとも上機嫌のままこたつへと潜り込んだ。
ピッとテレビをつければもう、いつものふたりの生活。
やっぱり家は落ち着くなと、どちらからともなく言葉がこぼれ、ふたりで笑った。
「省吾、今日はありがとう」
「誕生日だしな」
「毎日誕生日だったらいいな」
「したらなんもねえよ、アホか」
笑顔のハルに呆れながら、俺は内心ドキドキしていた。
帰り道からずっと、いつ渡すかとそればかり考えていたもんだから、酔っていても妙に頭は冴えたまま。
少し眠たそうに目をこするハルを見て、今しかないと自分に気合をいれた。
「ハル」
「うん?」
「実は今回はプレゼント付きだ」
途端にぱちくりと目を開き、驚いた表情で俺を見つめるハル。
「え……え、そうなの? なんで?」
「なんでとか聞くな面倒くせぇ。ちょっと目閉じてろ。いいって言うまで開けるなよ」
素直に目をつぶったハルを少し見つめてから、用意していたプレゼントをポケットから取り出し、ハルの頭からそれをすぽりとかぶせた。
チャリンと金属音が響く。
「開けていいぞ」
ゆっくりと目を開いたハルは、首にかけられたチェーンに視線を落とした。
「省吾、」
「指輪な、そのまんま渡すのも恥ずかしいからペンダントトップにしてみた。悪くないだろ」
「指輪……」
「一緒に暮らして初めての誕生日だしな。特別」
言い終える前にものすごい力で抱きつかれ、うっと声を詰まらす俺。
耳元でありがとうと囁かれ、まあとりあえず喜んでくれたようなのでホッと胸をなでおろす。
「すごい……省吾の所有物って言われたみたいだ」
「何だそりゃ、首輪のほうがよかったのか」
以前自分で、省吾は俺のものだなんて言ってたくせに。
「嬉しすぎて心臓が止まりそうだ」
「お前に締め付けられて俺の心臓のほうが止まりそうだ、力抜けっ」
締め付けから解放されたかと思ったら今度は押し倒されそのままキスの雨。
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