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二月十一日 4

 息もつけない程のキスのあと、思い出したようにハルが口を開いた。 「省吾のは?」 「なにが」 「省吾の指輪」 「ねーよんなもん」 「なんでっ! おそろいじゃないのか」 「は? 何だそりゃ、お前の誕生日になんで自分の分まで買わなきゃいけねんだよ。てかおそろいとかマジ勘弁」  なんだいきなりぶぅぶぅ言い始めて。  俺が指輪買うってだけでかなり奇跡だってのに更に何を求めてんだよこいつ。 「あ、そうか」 「なんだよ」 「省吾の誕生日に俺がおそろいのプレゼントしたらいいんだ、そうだそうだ」 「げ、おそろいとかマジでいらねー」 「そうだそうしよう。4月が楽しみだな」 「おそろいやめろ! だったら他のもんにしてくれ!」  嫌だ。本当に嫌だ。  言い出したら聞かないハルに何を言っても無駄だと諦め、とりあえずあと数ヶ月の間に忘れてくれる事を祈りつつ。  指輪を手にとり愛しげにキスをするハルを見て、俺は頬を緩めて笑った。 <終>

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