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二月十一日~おまけ~1
隣でスゥと寝息をたてる省吾を眺め、それから自分の首にかけられたチェーンに触れ、リングを手に取り、部屋の小さな明かりにかざしてみた。
去年の秋頃、まだ一緒に暮らす前だったと思う。
ふたりで出かけた帰りに立ち寄ったショップで俺が手に取ったスペーサーリングを、省吾は覚えていてくれたんだな。
リングを唇にあてキスをしてみた。
省吾がくれた。
俺のために選んでくれた、指輪。
「……嫁に貰ってくれる予告かな」
想像したら思わず頬が緩み、口元だけで微かに笑う。
省吾がそこまで考えてる事はないか。
それでも俺のためにひとりでショップへ行き、悩みながら決めてくれた省吾を想像するだけで、嬉しくてたまらない……。
思わず眠る省吾の額に唇をあて、それから瞼へ、頬へ、唇へ。
起こさないように、静かにキスをした。
「……んん……」
眉間にしわを寄せこちら側に寝返りを打った省吾の身体に腕を伸ばし、そっと抱き寄せてみる。
「……うーん……なんだよハル、まだ起きてんのか……」
起こしてしまった。
「ごめん、嬉しくて眠れなくて」
「……ふぅん……おやすみ」
どさくさにまぎれて寝ぼけている省吾を胸に抱きしめ髪に唇を寄せると、うめき声があがったけれども振りほどかれはしない。寝ぼけた省吾もまた可愛い。
「ひとりで選ぶの、悩んだだろ……ありがとう」
きゅうと抱きしめると。
「んん……先輩に付き合ってもらったし、別に……」
待て。
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