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二月十一日~おまけ~ 2
むにゃむにゃと眠りかけた省吾の肩を掴み、聞き捨てならないと再び確認してみる。
「なに、先輩て」
「あー……? 先輩は先輩だようるせーな……」
「なにそれ聞いてない。誰だそいつ、ふたりで出かけたのか、どんな奴だ」
「出かけたっつーか仕事帰りだよ、今度は何だようるせーなあ」
眠りを邪魔されてみるみる不機嫌になっていく省吾と、男の影にみるみる不機嫌になっていく俺。
「名前は」
「言ってもわかんねーだろ、伊勢さんて人。リングの話したら店まで付き合ってくれたし、詳しくて助かったし」
「完全にデートじゃないかいつのまに!」
「はあ? アホか。つかくだらねー事で起こすんじゃねえよ」
「くだらなくない、秘密にしてたなんて許さない」
「プレゼントが秘密なんだから言うわけねーだろ、うぜぇ、お前面倒くせぇ、もう返せそれ」
「返せ? 本気で言ってるのか? 大体省吾は……」
真夜中に始まった喧嘩は省吾が折れてキスをするまで続き、仲直りに身体を重ねた頃には明け方の四時をまわっていた。
朝が来るまでのほんの少しの時間を、俺たちは抱き合って眠った。
心の中で、ごめんとつぶやきながら。
くだらない事で喧嘩しても、どうかずっと傍に居て。
省吾は俺のもので、俺は省吾のものだから。
<終>
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