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スイートバレンタイン(社会人四年目:バレンタインデー)1
二月十四日。
世間一般ではバレンタインデーという名のチョコレート祭りが盛り上がっている。
学生時代はやたらと貰ったりもしたけれど、女性社員の少ない研究所勤めになってからは周りも特に盛り上がる空気はなく。
いつもと変わらぬ日常だ。
更に言えば恋人は男だし、これまで敢えて時間を作って会う程の執着はお互いなかった。
とはいえ今回は一緒に暮らし始めて初めての事だし、あいつが大好きなケーキをワンホールでも買って帰れば喜ぶかなと想像し頬を綻ばせた時。
「小出くん」
名前を呼ばれ振り返ると、所内保健医の佐和さんが立っていた。
ハイと差し出された丸い包みを思わず受け取る。
「バレンタインデーですから」
「あ……はは、ありがとうございます」
「お返し、期待してるわ」
ヒラヒラと手を振りながら白衣を翻し立ち去る佐和さんの後ろ姿を見送った後、手にした包みに目を向ける。チョコレートだろうな。きっと甘いものが大好きな省吾が食べてくれるだろう。
などと軽く考えていたのは朝の話で、帰る頃には自分の机はバレンタインの包みが山となっていた。
いつの間に女性社員が増えたんだろう。最近流行りの女性活躍なんちゃら方針か。自分が気付かなかっただけで、どうやら男だらけの研究所に華やかな女性社員が急増していたようだ。
お掃除のおばさん達からもそれぞれ直々にいただき、お返しに頭を悩ます事になりそうだとため息をついた時、バタンと部屋の扉が開き、チームの先輩達がわらわらと入ってきた。
「あー疲れた。お、ハルまだ居たのか」
「お疲れ様です、もう上がろうと思っていた所です」
「そうかぁ……って何お前そのプレゼントの山!」
ひとりの先輩の声で、皆が俺の机に寄ってきた。何だか目が恐い。
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