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スイートバレンタイン 2
「いや、皆義理で」
「掃除のおばちゃん達からは俺も貰ったけど三個だぞ」
俺も俺もと声が上がる。
これは誰からだと丸い包みを指差され、保健医の佐和さんからだと答えると、一同ざわめいた。
「佐和さんだと……!?」
「プ、プレミアム……!!」
騒ぎ立てる先輩達を見て、そうか佐和さんてモテるんだなと気付く。確かに綺麗な女性だしな。まあでも朝のあの様子から言って、義理でくれたのだろう。他の人には配らなかったのか。
「こっちは、これは」
「庶務課の関さんと南さんと……最近入社した……名前が思い出せないけど若い女の子二人組と」
「女性社員総ナメじゃないかお前」
ズルイと喚く先輩達の相手も面倒になり、さっさと片付けて笑顔で挨拶をし、部屋を後にした。
やれやれとため息をつき歩き出した時、スマートフォンにラインの通知が入った。省吾からだ。
『飲みになったから遅くなる。飯いらない』
そういや今日は本社研修と言ってたな。飲みか。ちゃんと終電までに帰ってくるんだろうな。
淋しさからムカムカしてきて、思わずそっけない返信を送ってしまってから少し後悔。
夜ご飯どうしようかなと考えながら駅に着いた頃、今度は着信が入った。
圭介からだ。
今日は名古屋の学会に出席していたはず。
『お疲れ、まだ仕事か?』
「帰っている途中」
『もうすぐ東京駅に着くからさ、新宿辺りで軽く飯でも付き合えよ』
「何で、他を誘え」
『バレンタインに誰か誘って誤解されても困るしさ』
普通の友達は居ないのかお前には。
『学会で聞いた話もしたいしさ、お前の家から近い場所でいいから、な』
省吾も飲みに行ってるしという考えが頭をよぎり、まあいいかと了承し、電話を切った。
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