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スイートバレンタイン 3

 学会帰りの圭介のテンションは通常の三割増しで、会うなり疲れが押し寄せた。真っすぐ帰った方が良かったかもしれない。 「なんだその紙袋、はは、無造作に突っ込まれてるなあプレゼント達」 「煩い、お前は明日同じ目にあうだろ」 「佐和ちゃんから貰った?」  ニヤつく圭介を軽く睨むと、更に楽しそうにニヤつかれた。 「……貰ったけど」 「お前の事落としたいらしいよ」 「は?」 「でも俺が落とすし諦めろって釘刺したんだけどなあ」 「は?」  俺の居ない所でどんな話が繰り広げられているんだ。  恐ろしくて聞きたくもない。 「で、お前は今日はいいの? あのガキんちょ」 「ガキんちょとか言うな。省吾は飲み会だし、そもそもバレンタインなんて俺達には関係のない行事だ」  と省吾も思ってる筈だ。 「ふぅん」 「あ、でもケーキは買う、ワンホール。だから早目に帰る」 「ワンホール? なんで」 「ワンホール食うのが好きなんだあいつは」  省吾はホールケーキをそのままフォークで食べるのが好きなのだ。初めて目の当たりにしたのは大学生の頃だったなと思い返す。社会人になった今でも、子供みたいに嬉しそうな顔をして食べる姿が堪らなく可愛くて、機会がある度にその姿を堪能することにしている。 「ぷっ、やっぱりガキんちょじゃないか。で、お前はいつまでも甘やかしているわけか」 「煩い、そんなんじゃない」  隙あらば纏わり付く圭介の腕を振り払いながら、駅から程近いダイニングバーの扉を押し開いた。  平日とはいえ店内は満席で、今から出る客がいるので片付けまで少し待ってくれと店員に言われ、まあいいかと待っていると、やがて奥から五、六名の団体客がこちらへ向かって歩いてきた。  先頭のスーツ姿の男を眺め、胸元の社章に目が止まる。  省吾の会社だと思いながら後方に目を移し、思わず固まった。  省吾。

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