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スイートバレンタイン 4
隣の男と会話しながら歩いてきた省吾の視線が俺に向いた瞬間、大きな瞳がさらに大きくなり、それからムッとした表情に変わった。
「あれ、ショウゴじゃないか」
無神経な一言を放った圭介を今すぐ殴りたい。
俺が口を開くまでもなく、省吾はすぐに表情を戻し、そのまま店を出ていった。
多分、今のは良い状況ではなかった。
多分、失敗した。
「圭介じゃなければまだ良かった」
「なに?」
「何でもない、帰る」
「なに? おい」
「駄目だ、悪い、帰る」
心配症なんだよお前はという圭介の言葉を背に、俺は駅へと引き返した。
駅ナカの洋菓子店でチョコレートケーキをワンホール購入し帰宅したけれど、省吾はなかなか帰ってこない。
テレビをつけたままリビングでボンヤリしていると、やがてガチャリと玄関の鍵を開ける音が聞こえてきた。
ハッとして振り返ると、リビングの扉が開き、ブスッとした表情の省吾が入ってきた。
時刻は深夜0時を回っている。
「お帰り」
「……ただいま」
鼻と頬が赤いのは、寒さと酒のせいだろう。
コートを脱ぎながら寝室へ向かおうとする省吾の腕を掴み抱き寄せると、離せボケと悪態をつかれた。
「省吾、機嫌悪い?」
「別に、普通」
「怒ってる?」
「別に怒ってねぇよ」
「じゃあキスしていい?」
「やだ」
「やっぱり怒ってる」
「煩せぇ、怒ってねぇよ」
開いた省吾の口を塞ぎ舌を押し入れると、嫌そうに抵抗された。
それを押さえ付けるように全身で身体を抱きしめ、ソファへと押し倒し、更にキスを繰り返す。
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