292 / 428

スイートバレンタイン 9

◇◇◇  息を吐きながら、まだ熱の残る省吾の身体をぎゅうと抱きしめる。大きく胸を上下させて乱れた息を整えようと呼吸を繰り返す省吾に、乱暴にしてごめんと小さな声で呟き、汗ばむ額に唇を押し当てた。その言葉に応えるように、省吾の両腕が俺の背中にまわり、きゅうと抱きしめ返された。  瞳の奥がじんと熱くなる。  好き、大好きだと呟くように繰り返しても、伝えきれない。全然足りない。 「省吾がもし……俺と居るせいで壊れても」 「は、なんだそりゃ」  アホかと渇いた笑いを漏らす省吾の首すじに噛み付いた。 「それでも俺は離さない、離してやらないよ……絶対に」  省吾の言葉はわかっている。  わかってるって、言うんだ。いつものように……。 「俺も、離さねぇよ」  顔を上げ省吾の瞳を見つめると、呆れたように目を細めて小さく笑った。 「お前煩い。俺がお前を離さねぇよ……」  たまには黙れと言って笑う省吾を、力いっぱい抱きしめた。  ああ。  好きで好きで、たまらない。  抱きしめた省吾は、甘い香りがした。 <スイートバレンタイン:終>

ともだちにシェアしよう!